関門2択

 

 またも勝手に言葉を作ってしまった…。
 ストUの間合い戦の魅力を表現する方法をあれこれ考えた末、「純粋2択」と区別してこう呼ぶことに決めました。ちょっとした冒険ですが、頑張りますのでよろしく。

 ストUで相手に技を当ててダメージを与えるという行為に至るまでには、相手がそれを防ぐことができた選択がほとんどの場合存在する。
 簡単に言えば波動拳に当たった場合、その前に相手は跳び込むことができたはずだし、また昇龍拳でよけることもできたはずだ。最悪防御ということもできる。空振り中の無防備に攻撃されたのならば、そこで空振りしなければよかったということだ。
 すなわち、ダメージという目的に達するまでに自分は相手がそれを阻めるあらゆる関門を突破したことになる。この瞬間瞬間の決断を「関門2択」と呼ぶ。
 「関門2択」の勝利はただ有利になるだけのものが多く、「関門2択」をくぐり抜けて行く先には確実にダメージを与えられる「純粋2択」が存在し、この関門を簡単に突破させないことが強さである。
 関門は通るだけでなく、関門の鍵を開ける(ダメージを負わせる)こともできる。しかしそれを目的とした場合にもそれを阻む関門が必ずある。
 何かの拍子に関門を通り抜けても、学習機能のある使い手は次の時にはそれに対する関門を用意しておくのだ。すると2度目はその門に阻まれて通ることができない。しかしその時にはその門に鍵をかけたために開いてしまった関門がまず存在するのである。
 鍵の空いた関門を通るか、それとも用意された門を空ける鍵を作るか。
 その鍵と門との思考戦を駆け引きと呼び、相手の行動に対して用意できる関門の数がだいたいの場合、そのままその対戦の深みにつながる。
 ストUはこの「関門2択」の比重が大きいために実力に差があるとまず勝てない。そこが楽しいし、また厳しいと思う。
 最近の格闘ゲームは「純粋2択」が充実し、またそこへ至るまでの関門の数が少ないので、大味に感じる。ゲームスピードとダッシュ系の技のせいだろうか。
 簡単に2択を突きつけられるということは、ハメ合いをしているのと同じだから。
関門の例としてリュウケンの足払い局地戦を見てみよう。

 自分が踏み込んで貫通大足をするという行為までに相手は
@後退してスカす
A踏み込みに対し大足払い
B踏み込みに対し中足払い
C踏み込みに対し(踏み込んで)小足払い
D足払い完成前に踏み込んで投げる
E足払い完成前に跳び込んで連続技
F足払い判定を昇龍拳で斬る
G防御
 というような選択を瞬間的に迫られているのである。
 どれか一つでも決断し、門に鍵をかけていれば大足払いを食らうことはない。

 Aの踏み込みに対し中足払いをするという関門に対し、自分は
H早めに大足払い
I早めに中足払い
J同時に小足払い
K足払いを見切って立ち止まり、空振りを攻撃(または踏み込む)
L地ずり斬月(足払いに昇龍拳)
 というような鍵を用意することができる(そのかわり貫通大足が目的ではなくなる)。
 H〜Lに対して相手には「何もしないで立ち上がりスカらせる」という関門があるが、それを狙い用意しておくと、A〜Fの門は空け放たれる。
 自分はというと門に鍵が合わなそうだなと思ったら、鍵を差し込まずに下がり相手の心理を観察して鍵を作り直すこともできる。
 そして相手の足払いの関門を無事に通り抜けたら、自分が昇龍拳や投げというその間合いに近づいた者だけが可能な関門を用意できる特権が得られる(この駆け引きは異種格闘戦の時に顕著に表れる)。
 このような「関門2択」の決断の積み重ねが局地的勝敗につながり、その積み重ねがラウンド、さらには試合の勝敗を決定する。バクチ技でたまに門を強硬突破できても、2度目は厳重になっているために返り討ちに会い、最終的には負けてしまう。
 この攻防は「確率」と「心理」がかなり重要な位置を占めると思う。

 

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