ゃがみ中キック

 

 

評)

 
 しゃがみ中キック(以下、中足)は大足払いほどではないにしろリーチもそこそこあり(疑問はあるが)、攻撃判定が完成するのもそれなりに速く、スキもあまりない(ゲームスピードにもよるが)。使いどころさえ間違わなければ非常に有効な技だ。

なかでもスキが小さいということが最も重宝し、反撃を食らいにくいことや跳び込まれても大丈夫という堅実性から中足を好む人は少なくない。足の遅いリュウは自分から踏み込むよりも相手が踏み込んで来たところを攻撃することが重要になってくるのでなくてはならないものかもしれない。

 基本的には中足払いは大足払いと重なり合うとほぼ負けるために、足技戦での切り札にはならない(リュウケンの足技は本当にバランスよくできている)が、この重なりを巧みにズラせる技術を修得している達人がこのスキの無さを全面に押し出した戦い方をし始めると実力で拮抗していないかぎり逆転の芽もなく排除される。中足払いを大足払いほどの集中力で間合いミスなく出してくる使い手がもし増えてくれば、中足は大足に弱いなどという今の理論は否定されることになるだろう。

 斬れ味は鋭くないが鞭のようなしなやかさを秘める中足払い。相手を封じ込めるほど中足払いを使いこなしている人はあまりいない。

 

1.蛛の巣中足

 相手の踏み込みを止めること、相手の足払いを誘うこと、相手の技の戻りを攻撃すること、波動拳の踏み足を蹴って消すことなど、攻撃・牽制・反撃全てを行うという中足払い。大足払いと違って跳び込まれても対応できる。
 相手を転ばせずにジワジワと体力を奪って封じ込めている状態の時に畏敬を込めてこう呼ぶ。

この技は初代ストU時代に凝ったことがあり、気が向くと今でも使用する。大足払いから中足払いへの極端な変化のために相手はとまどってくれて勝率はかなり高い。まあ大足払いのイメージがあるから通用しているだけかもしれないが。
 中足払いのいいところは相手がこの技を甘くみているということだ(私も甘くみている)。
 一時期中足払いを研究してわかったことは2つあり、その1つは「中足払いは判定的にはあまり使えないが、その使えないところが心理的に使える」ということである。
 大足払いと同じように攻撃技として考えるとあまりにも判定が弱く短くて有効に使うのは難しいのだが、その弱さが相手の欲を刺激して誘いとして効果的だ。
 この誘いとは大足払いを誘うとかそういう具体的なことではなく、相手が自分を倒そうという前向きさを持ってくれるということ。
 貫通大足払いは相手がしまいには何もできない状態になって防御という選択をさせてしまうが、中足払いは本来どうとでもなる技なので相手は防御を解いていろいろ工夫してくれる。ここが中足払いのツボであると思う。
 中足払いを大足払いで蹴ることが当たり前のようになっている上級者相手には中足払いの弱さを全面に出しつつ、その弱さに相手に触れさせないような戦い方をすれば、スキを突いた渾身の大足払いよりも遥かに効率よく相手の体力を減らすことができる。大足とはまともにぶつからず、タイミングを微妙にズラせるのである。強打者を打ち取るには絶好球のボール1個分ズラせばいいと言うがまさにそれである。具体的には
定解除の中足れない中足い中足の項を読んで欲しい。

 中足の特性の2つ目は「中足は相手が転ばないので自分の流れが悪いとわかっていてもズルズルと引き込まれてしまうような魔性の技である」ということである。 一回投げられたり転ばされると戦いはとりあえず一段落するので、やられた方も思考時間が持てて反省や方針の変更ができるが、中足払いの肉を削っていくような 局地戦の連続だと、駆け引きを忘れて中足払いを蹴ることに夢中になってくれたりすることがある。
 一つ一つのダメージが小さいから危機感を持たないので、気を引き締めたりすることはない(ような…)。そしてダメージが蓄積していった頃にはもう手遅れで挽回を図る相手の強引な技のスキをさらに料理していけばよい。
 大足払いのように跳び込みからごっそり体力を奪われるようなことはないので、体力差の貯金を有効に使いながら、残り時間も利用して駆け引きを行えるし、中足払いを見切ろうとする相手にはほんのたまに大足払いを混ぜるとこれがうれしいくらいに当たってくれる。そのうち相手の気が触れる(じっくりいけばいいのにキレてしまう)ので、そうなればさらに楽になる。
 このような展開が中足払いの理想である。

 大足払いは恐怖心を乗り越える精神力さえ持っていれば(これが難しいが)いずれ極められると思うが、中足払いはセンスがなければ極められないと思う。
 大足払いは基本的に空振りさえしなければいいが、中足払いは常に弱さがつきまとうので相手の攻撃判定と重ならないことに神経を使わなければならない。
 一見てきとうに見える中足払いは実は微妙な使い分けがあり(Xのスピードだと雑になる)、蹴られない中足にはそれだけの理由があるのだ。そこまでたどりつけないうちに中足払いは使えないと結論づけてしまった自分(ストU’・ターボ・スーパー・X中盤まで)は今思うと浅はかだった。極められてない中足を撃破しているうちに天狗になってしまったようだ。

司馬仲達型リュウケン(・三国志)

 理論対応型のある種の究極で攻め込まれると防御に徹するリュウケン。
 この場合の防御は合理的な計算に基づく防御であり、決して弱気になったからしているわけではない。自分が不利な状況では嵐が過ぎ去るのを待ち、有利な状況では骨までしゃぶる、それを徹底することは勝利への近道である。華麗に勝たなくても勝利すればその戦い方が一番強いとして認められるのが世の中である。
 足払いをスカしたり、昇龍拳で足を斬ったりということができるのは心理的に甘いのだ。負けたら死ぬくらいの覚悟で対戦をしたらそのような冒険はできない。
 これくらい色気を排除した使い手を倒すのは至難の技である。こちらも同等の 覚悟で挑まなければ歯が立たないだろう。

 

2.地獄中足

 蜘蛛の巣中足のパワーアップバージョン(とは私は思っていない)。相手が食らおうが、防御しようがキャンセル強波動をぶちかますという中足払い。蜘蛛の巣中足よりも出す回数は少なく、確実に相手に足先を当てて波動拳を出すのである。 中足払いの後に何かしようとすると強波動拳を食らい(小昇龍拳でよければいいが)、防御してしまうと突き放され、もがけばもがく程どんどん堕ちていってしまう。
ダッシュならその波動拳をリュウは竜巻、ケンは大昇龍拳で返すことができたが、今はスーパーコンボ以外不可能なので恐ろしい威力だ(中足払い昇龍拳になった時のために弱波動にしてもよいが、それだと脅威とまでにはならない)。
 この中足払い波動拳がメインのリュウケン(主にリュウ)は一時期爆発的に増えたので戦ったことはあるだろう。このタイプはバクチ的要素を徹底的に封殺していく緻密封印型リュウケン、自分の方が体力がある時の相手のいなし方が非常に上手い料理人型リュウケン、間合い戦にあまり自信がないのでとりあえずこの技で近づかせないようにしているだけのマニュアル重視型リュウケンの3種類に分かれる。 最初の2つは一応分けたものの、緻密封印型は料理人型を含むことが多い(料理人型が緻密封印型とはかぎらない)。3つ目は論外で空振りを見切って中足払い波動拳などという技はまずしてこない。リュウならばだいたい安全圏でのさりげ待ちとてきとう小竜巻からの2択などで勝負してくるのでまず負けることはないだろう。
 
 蟻地獄中足払いを好む使い手は駆け引きに長じていることが多いので、間合い戦とともに心理的な攻防を鍛えられることになるだろう。
 個人的には昇龍拳で足払いを斬ったり大足払いで転ばせたりという派手さの裏に見え隠れする甘さを切り捨てたリュウケンには不気味な底力を感じるものの、空振りや跳び込みに対するセキュリティーシステムを使用していること自体がラウンドで必ず存在する正念場での敗北につながるような気がしているので脅威を感じないし、苦手意識もない。中足払いが使えることを認めつつも、やはり今この瞬間に自分の信じた読みと心中してくるような不惑心中型リュウケン(後述)に優るものはないように思う。
 そこらへんの感覚は人それぞれなのだが、リュウケン戦においてはこう戦えば一番強いというスタイルが完全に決まっていないところも魅力の一つだ。
 西荻のリュウケン使いは個性的で自分のスタイルへのこだわりがあったので非常に楽しかった(ちなみにこれまでのリュウケンのタイプ別はいろいろな人を思い浮かべながら書いていた)。さすがに小足払いメインで戦っているという使い手に出会ったことはないが…。

緻密封印型リュウケン

 理論対応型が極まってくるともう相手が勝利する全ての道を塞ぎ、心理的な駆け引きさえ行えないほど(本当はそんなことはないが)緻密さで勝負を挑んでくる。相手の逃げ道さえ塞いでしまい、何をやっても詰み状態に持っていくのがこのタイプだ。基本はスキのない中足で、大足はおつりの時などの危険のない場面でのみ 使用するという真に理にかなった戦闘スタイルで、起き上がり昇龍拳はまず失敗しない。逮捕してもらいたいくらい危険極まりないリュウケンだ。
 緻密封印型リュウケンにはより緻密性で優るか、大足の斬れ味で威圧してたたみこむか、緻密性で勝負せず料理人になりきるかしか勝機はない。しかしこのタイプの極まったリュウケンはあまり存在しないし、私は足払い戦に関してのみ言えば(その他の駆け引き的な部分が互角なら)大足払いの極まった緻密奔放型リュウケン(後述)に分があると思っている。

料理人型リュウケン

 料理人型リュウケンは相手の戦闘意欲を流すことが上手で、相手が攻めてくれば下がり、落ち着いていたら挑発する。自分から攻撃もするが、相手を倒すのではなくポイントを稼ぐような戦い方で、最初からラウンドの最後の時点で体力で優ることを目標とした長期戦のプロフェッショナルだ。
 相手の土俵(得意な、または自分の苦手な戦い方)には決して乗らず(突然乗ってくることもある)、のらりくらりと受け流して相手の集中力が切れるのを待つ。 達人レベルになると 負けていても落ち着いていてすぐ攻めたりはせず、じっくり相手の行動を観察して確信の持てる逆転のチャンスを窺っている。この精神力はもう一枚上手としか言いようがない。

 

3.定解除の中足

 貫通大足払い殺しの技。
 相手が踏み込んで貫通大足払いをする時に半歩踏み込んで出す中足払い。
 強いリュウケンは確実に大足払いが当たる間合いでしか大足払いを振らないだけでなく、相手がスカらせようとして後ろに下がった場合でもさらに追いかけて必ず同じくらいの間合いに修正して大足払いを出すだけの判断力を備えている。
 しかしその時自分の踏み込みを相手が足払いで止める、スカそうとするという選択肢は計算に入れ易いが、何故か相手がそれに合わせて踏み込んでくるということを考えにくい傾向がある。だいたい自分が踏み込んでいるということはこちらが先手を取っている状況なので足払いの完成も速いはずだし、それにこっちから踏み込んでいるのだからわざわざ踏み込まずとも来るのを待って止めればいいのではないかと考えるからだと思う。
 気をつけることは相手が踏み込んできそうだから置いておくのではなく、相手が踏み込んで大足払いをすると決断した後で行うということ。その前に行うと立っている相手にただこちらが先手を取って踏み込み中足をした状態になるので、スカされて大足払いを食らうということになりかねない。一見後手を踏んだように見えるくらいがいい。
 一般に大足をする時、臨機応変な超反応対応型リュウケン以外はその決断をした瞬間に相手がいた地点をだいたいの目安にして踏み込む。スカす、止める、誘うという読みの駆け引きはこの前の段階で、その後は自分の読みと決断が正しかったかどうかという問題である。そして上級者は踏み込みを読まれて後ろに下がられても最悪スカされない大足払いの地点を設定してまず確実にそこまで踏み込んでくる。
 読みというか相手の実力を信じるというか、十中八九確実に大足払いが当たる間合いまでは何も技を出してこないので、出会い頭に中足払いが決まる(その間合い外で出すような大足払いは後ろに下がればスカすことができるから)。踏み込まないでその場で中足払いだと相手の間合い設定内なので負け易い。
 この技は貫通大足払いの最も威力を発揮する間合いを相手の予想より一瞬速く自ら作り出すという意外性が盲点となっているので非常に有効。ぜひともマスターしたい技だ(といっても多くの人は無意識のうちにやっているはず)。

 

3.ばさずの中足

 貫通大足払いの間合いでの中足払い。
 大足払いを読まれて跳びこまれると一気に大ダメージを与えられてしまうが、中足払いであるならばその跳び込みを昇龍拳で撃ち落とせる。しかし、中足払いに頼ると足技戦で間合い的・判定的に攻防が制限されてしまうことは確かだ。大足払いの攻撃力を保ちつつスキという弱点を持たない都合のよさがあれば最強のリュウケンであると思う。それはシステム上不可能だが、相手を心理的駆け引きで跳ばさないことができればスキがないことと同等になる。

 相手を跳ばせないように間合い戦の途中で大足でも中足でもあまり効果が変わらないような時はできるだけ中足払いを使用して相手に印象づけるのだ。
 相手が足払いのタイミング勝負(足払い間合いに内に入ってから攻撃判定を完成させるのがどちらが速いか)をしてくる時は大足払いでなければ不利だが、足払いの間合い勝負(相手の足払いを見切って空振りさせることができるか)をしてくる時は空振りをしないことを前提にすれば中足払いでもかまわない(ダメージや転ばないということに違いがあり、そこが駆け引きにおいて重要な違いではあるが、この局地的な部分においてどちらも当たるということに対しては同じだから)。

 タイミング勝負をしながら跳び込みの機会を窺える思考力を持ち、しかもその狙いをこちらに気づかれないような演技力を持つ使い手はまれなので、間合い勝負の時は中足払いと決めてしまってもいいかもしれない。世の中には野生の勘という武器を持つリュウケンが存在するので絶対ではないが。
 この使い分けがそこそこ(超反応の判断力が必要になるので、完璧に行うことは不可能に近い)できるようになれば、それを見切られるまで相手は自信をもって跳びこむことはできない。上級者ほど自分の読みで確信が持てないかぎり跳び込んでこないので半ば封印したようなものになる。

 この跳ばさずの中足の対極に位置するのが前述の背水の大足である。跳ばさずの中足は跳び込みをさせないように仕向けるのに対し、背水の大足は跳ぶなら跳んでみろというちょっと強気すぎるのが心配な技だ。

 

4.気中足払い

 相手が踏み込んできていないと当たらない間合い、本来攻撃判定のない足先が相手にめりこんでいる中足払いを踏み込んで出すこと。
 自信をもって大足払いを振ることができない迷いを持った状態の時や相手の踏み込みにおびえてしまった時に使用してしまうことが多く、あまりにも弱気(精神的判定負け)。攻撃の意志があるならば相手に当てるだけの踏み込みが必要だし、踏み込みに対する防御ならばもう少し引きつけなければ意味がない(相手の行動に合わせて中足払いを出さなければならない)。読みから出した中足ではなく、どちらに対しても無難という最も中途半端な行動であり、見てから大足の餌食にされるのでズバリだめでしょう。Xのスピードによってはその中足を攻撃されないこともあるが、それは相手の反応が悪かったから。有効だと誤解すると即死亡。

相手の大足払いの間合い内で立っている状態から(これ重要)しゃがんで中足払いを空振りするという行為は絶対してはいけない。中足はスキのない技だが、しゃがむという動作を計算に入れると見てから蹴るくらいのスキは充分ある(相手がしゃがみ始めたのに合わせてこちらもしゃがみ始めるとちょうど相手の中足の戻りに大足払が入る)。反応のいい使い手にとっては大足払いを空振りしたことと同等の意味を持つということを認識して欲しい。
 牽制の中足払いは最初からしゃがんで おいてから出すこと。その場合の中足空振りは見てから蹴ることは超反応以外まず不可能なので、読みがはずれて相手が踏み込んで来ていなくても安全である。
 この間合いの中足払いで唯一有効だと思われるのは波動拳つぶしにおいてであるが、波動拳を撃っていなかった時に必ずやられるのでは効果が見合わないので、これで波動拳を止めるくらいなら跳び込んだ方がマシだろう。

対戦の楽しみ

 よく勝利に固執する戦い方をつまらないと表現する人がいるが、誤解している部分もあると思う。負けてもいいと遊び心のみで戦ってギャラリー受けという楽しみもあるが、本気で勝利を目指した駆け引きの楽しみ、自分の身につけた全ての技量をぶつけ合うところにも楽しみがあるのである。人によって好みもあるのでしょうがないが、その域まで達していないうちに簡単に否定して欲しくない。

 

5.れない中足

 弱気中足払いの間合いだが自分から踏み込んで出すのではなく、自分が最初からしゃがんで待っている状態で、相手が踏み込んできた時に待ち受けて出す中足払い(連打)。日本で最もつれないと言われた男の得意技。
 最初からしゃがんでいるために見てから大足ができない(超反応以外)。貫通大足をしようとすると連続で出した2回目の中足払いに当たることが多いので、これを蹴るためには麻薬大足を使わなければならないのだ。しかし、それを狙うと踏み込みが甘くなって誘い中足払いなどにひっかかって空振りしてしまうことがあり、また意識しすぎて中足払い空振り後の波動拳に当たることがある。
 スーパーまでならこの中足を小足払いではじくことができたのであまり恐くなかったが、Xになってから相打ちでダメージで負けてしまうのでとても有効になった。
 足払いの間合いを知っていて反応がいい相手のつれない中足は貫通大足払いの天敵である。妥協して読みで麻薬大足払いを使うしか確実に攻撃を与えることはできない(が、読みなので読まれて立ち上がられると空振りさせられてしまうから危険だ)。
 踏み込んでいって中足が当たらず、大足が当たるという間合いにあなたは立ち止まることができるだろうか。その間合いを把握できるのならば、この中足の空振りの隙間に見てから大足を差し込むことができ、攻撃は入らないものの防御まではさせられることができるので(可能ならばそこから足払い波動拳)今のところ最も確実な対応になっている。また、踏み込みに対応して必ず中足出すとわかっている場合はいつも大足をするタイミングの前にジャブを空振りしてから大足払いをすると、ちょうどズレて中足の戻りに大足払いがきれいに入る(確実とまではいかないが)。
 ケンの一文字げりを読みで出すという手もあるが、見てから防御されることが多く(こちらの踏み込みに合わせて出すのではなく、てきとうに出しているのなら当たってくれるかも)、またタイミングによっては攻撃判定完成前につぶされるので少々不利な駆け引きだ。

 

6.い中足払い・ノストラ中足

 相手がその場で蹴れないくらいの目の前で(弱気中足よりも間合いは広め)空振りする中足払い。超反応や読まれていた時は蹴られることがあるが、ほとんどの場合その中足自体を蹴ることは不可能なので、見せ技として活用できる。最低限のスキと引き換えに相手の仕掛けを誘うことができるが、中足空振りの間動けなくなるために相手に先手を取られてしまうので、対応を間違うと相手の攻撃を流すことはできない。互いに距離を取るアウトファイトから、まずどちらか一方がダメージを食らうようなインファイトへ移行したい時にこの技を使用する。

a)中足払いをして、相手が大足払いを振ってきたら、立ち上がってスカらせておつりを食らわせる。
b)中足払いをして、相手が踏み込んできたらちょっと後ろに下がって足払いをスカらせ、おつりを食らわせる。  
c)中足払いをして、相手が踏み込んできたらそれに合わせて大(中)足払い。一文字げり・正拳突き・竜巻。
d)中足払いをして、相手が踏み込んで来たら自分からも踏み込んで足払い(投げられるのなら投げる)。
e)中足払いをして、相手が踏み込んで大足払いを振ってきたら、その足を昇龍拳で斬る。
f)中足払いをして踏み込み大足払いを昇龍拳でよけて相手の空振りの無防備に大足払い(または投げ)。
g)中足払いをして相手の大足払いを小竜巻で跳び越えて(ちょっと苦しい)着地昇龍拳(または投げ)
h)中足払いをして相手が大足払いをしてくるのを読んで跳び込み、ケツ蹴りからの連続技(ノストラ中足)。またはJFK。
i)相手の起き上がり直前に目の前で中足払いを空振りして、相手の起き上がり投げを誘って昇龍拳(あまり使えない)。

 基本的にはabe、勝負どころでefh、cgは確信のある時に使用する。
ノストラ中足は頻繁に使わないようにして、無警戒になったところで突然組み込む。

 

7.リババの中足

 
相手に中足払いの足首あたりを当ててその後踏み込んで大足払いをするという技。
 いやらしさ爆発! 中足を当てた時に離れる中途半端な間合いがスカらせられないにも関わらず、相手を立ち上がらせてしまうのだ。足技戦、特に足払いをスカらせる技術が上達して、あまり考えなくても自然にできるようなレベルのリュウケンが最もひっかかる。ちょっと油断しているとこの技を知っていても無意識に立ち上がって食らってしまうといういやらしさ。防御を解かせる魔法の中足だ。
 このパターンの時は先手を取られている受け身の状況なのでまずスカらせられないと思っていい。防御か、その次にまずくるだろう大足払いを狙って昇龍拳だ。 それ以外の技はあまり有効ではないと思う。

 

不惑心中型リュウケン

 心理分析型リュウケンの究極。ここぞという勝負どころで自分の予測以外の相手の行動に対する保険は全くしないような決め打ちタイプで、こうなると相手にとってはイメージ先行型に近くなってくる。
確信に至る読みというものは本当に存在し、それを信じきれない理論対応型には強さの限界というものがあると思う。緻密さは非常に重要だけれども、それだけでは上手いだけで強いとは思われない。強いと思われなければ対戦相手を威圧できない。威圧とは相手の手を縮こまらせ、読みへの自信をなくさせる最高の手段であり、威圧した時点で8〜9割は勝てる。
 不惑心中型リュウケンはたった1つの読み勝ちでラウンドを制してしまうような威圧のプロフェッショナルである。ある局地戦で「読まれた!」と相手に印象づけて心に不安を抱かせ後の展開を有利にするのだ。勝負強い不惑心中型リュウケンはどこからでもひっくり返す爆発力を持っているので危険極まりない。
 しかし、その人にしかわからない独特の根拠で相手の行動を予測することもあり、時たま大はずれもある(だからこそズバリきた時の威圧になるのだが)。また相性に左右されることもあるので、緻密性を兼ね備えていないかぎりスキはある。

 

りあえず中足払い

 個人的な見解だが、相手に近寄られたらとりあえず中足を出しておけばやられないなどというのは迷信である。乱戦で相手が迫ってきた時中足を出すくらいなら大足や昇龍拳の方がまだ筋がいい(とりあえずでなければOK)。
 というのはその時の中足は攻撃なのか、防御なのか方針が決まっていない技だからである。食らいたくなければ防御すればいい。食らうのは嫌だけどあわよくば攻撃を当てようくらいの気持ちで魂のこもった大足に勝とうというのが甘いのである。
 自分が対戦をしていて最も負ける気がしないのがこのとりあえず中足を使う無難選択型リュウケンで、彼らは自分の読みを信じきれないので必ずどちらに転んでもいいような中途半端な選択をする。
 そして選択の結果はその局地的な部分において最悪になっていないので(ある意味最悪)間違いだとは思わず、そういうやや不利状態を抜け出す決断ができないまま負けていく。そこそこできる中級者に多いタイプで読みとバクチを同じレベルで見てその不確実性に反発しているのである。

 
リュウケン戦は相手からダメージを食らわなければ勝てるという種類の対戦ではないので(異種格闘戦ではそれが駆け引きになる組み合わせもある)いつかは冒険しなければならない。相手の行動に幅広く対応できる技を知っていると便利だし、それで勝てる相手もいることはいる。しかしいつかそれだけでは勝てないレベルの相手にぶち当たるのだ。必ずどちらかを選択しなければならない場面があり、それらが複雑に絡み合い、駆け引きになって、それを制したものが勝つ。その時信じられるのは自分の読みだけであり、それが凝縮されているのがこの場面だと思う。  私はここでとりあえず無難な中足を出すリュウケンはまず勝負どころでも無難な選択をして、倒せる相手を逃したり流れを変えられて敗北を味わうリュウケンであると思う。
 とりあえずは良くない。とりあえず出した技で勝利できるような強者は存在しないのだから。

 ここでの中足は相手が迫ってくるからという理由で出すてきとうな中足で、相手の踏み込みを読んだ中足とは天地の差がある。中足を振るなと言っているのではない。誤解しないで欲しい。
 それにここでの決断をてきとうバクチと一緒にされては困る。決断した行動がバクチと同じだったとしてもバクチはバクチで読みではない。バクチは点で、読みは線だ。今までの展開・体力・間合い・前回の対応・見抜いた癖・相手の思考や狙いの看破など根拠を持っている(あまり考えていないという感覚派の人も言葉にしていないだけで必ず分析していると思う)。点は線には絶対に勝てない。もし負けたのなら読みが点線だったからだろう。

舞台演出型リュウケン

 心理分析型リュウケンのある種の発展系。心理的な攻防に熟練し、なおかつ緻密な見切りができる使い手は、相手を読むだけでなく相手にその技を出させるための駆け引きをするようになる。このような戦い方をするリュウケンを舞台演出型リュウケンという。 
 ダメージを与えるには相手が何かするのを待つのではなく、相手に何かするように誘導した方が効率がいい。また上級者相手だと甘いスキなどは見せてくれないので、こちらからスキを作らせなければならない。
 舞台演出にも「舞台乱入」「餌づけ」「偽撃転殺」「威圧前進」の4種類、特殊で「シャープ・フラット」があり、これらを絡めて相手の行動を誘導していく。

舞台乱入

 対戦していて相手の狙いを察知した時にそれを避けるのではなくあえてそれに乗ってあげるというのが舞台乱入戦法である。と言っても最後まで付き合う必要はなく相手に「しめた」と思わせて出した技をギリギリのところでカウンターで攻撃するのだ。具体的には誘い技の後にあえて踏み込んでみる、さりげ待ちをされている時に故意に技を空振りしてみるなどがある。
 人間は比較的敵が攻めてくる時や逃げられそうな時は慎重で自分の懐の獲物には油断してしまうから通用するのであるが、相手の舞台に乗るために危険を伴うので確実性を重視した場合は頻繁に使う技ではない。相手が理論対応型リュウケンの時や自分が体力で大幅に負けている時などは相手を有利な状況にしてあげないと駆け引きに応じてくれないことが多いのでこういうことも必要になる。

餌づけ
 
敏感な洞察力と分析力を持つ思考計算型相手に有効。
 自分のスキや愚かさを相手に印象づけて相手がそれを狙ってきたところを攻撃する戦法で、故意に自分の作った偽物の癖を相手に悟らせて(故意にやられることもある)しめしめと思わせることができれば、相手は冒険を冒険と思わずに安全と確信して行動してしまうのである。自分が体力で勝っていてちょっとくらいやられても相手にダメージを与えたい状況の時やもうそのラウンドの勝利(または敗北)を確信して次のラウンドでの布石を作りたい時に使用する。
 具体的には昇龍拳や波動拳を出すパターン、中・小足払いの誘い技パターンなどがわかりやすいが、緻密な足技戦では踏み込むタイミングなどにも発展する。

偽撃転殺の計 (・三国志)

 同じ連携を繰り返し、危機感が喪失したところで逆をいくことを偽撃転殺の計(BY曹操)と言う。脚本どおりの展開に慣れてくると、その中に駆け引きが存在しないという錯覚に陥ってしまい思考が浅くなっていくのでそこにつけこむのである。虚誘掩殺の計に注意。
 逆をとられるという発想を喪失させることができればいつでもダメージを与えられるので一気にたたみこむ時や逆境の時に非常に便利。常に安牌を持っている12枚麻雀だ(たまにそれを抱えたまま死亡してしまうこともある)。
 相手の思考が麻痺していなくてまだ警戒されていると察した時は、いつ逆がくるかという心理的圧迫感だけで駆け引きを有利に持っていくことができる。
 具体的には足払いパターンでの踏み込み投げ、猫だましから昇龍拳などの足払いか投げか昇龍拳かという駆け引き。いろいろ。

威圧前進

 相手に近づいていくことで何か技を出さなければならないと心理的に思わせて 強引な駆け引きに持ち込むことを威圧前進戦法といい、リュウケン戦で攻撃において非常に重要な技。自分が相手を威圧して迷いを持たせた時に最も有効。
 どんな使い手でもこちらから踏み込んで行けば何かしら手を打つものであり、その手段は読まれていないかぎりその場のとっさの判断になってしまう。
 上級者は判断力も鍛えられているし予定内の行動として受けとめることができるが、それでも普通に駆け引きをしている時の行動よりは確実に雑であり付け込みやすい。
 必ず何か対応するということがわかっているからこちらがとても有利な状況なので(いつ踏み込むかは自分で設定できるから)どんな上手いリュウケンでもこの戦法で切り崩すことができると思う。
 この戦法がある以上リュウケン戦に待ちは存在しない。こんなにやれることが多いのだからリュウケン使いが「待たれたから負けた」などと言っていたら笑ってあげよう。

シャープ・フラット

 その前と同じように技を出すのだが、この時タイミングを微妙にズラすことで 相手の読みや決断を妨害するという戦法。半テンポズラすことを何と呼ぶか知らないので半音上げてみました(許してくれ〜)。
 リュウケン足技戦は自分が踏み込んだ時に相手が下がっていたら、逆に踏み込んで来てたら、先に攻撃判定を完成させられたら、影ぬいをやられたら、攻撃判定のギリギリ先を当てるという速さを取るか空振りの危険を取るか、前もって踏み込みのために足払いを置いておくか、昇龍拳で足を斬るかなど、あらゆることを判断して行動するのでややこしく感じるが、シンプルに考えると踏み込むか止まるか、出すか出さないかという2択の積み重ねである。
 本当に極まるとリュウケン戦はよけいなところをそぎ落としていってただこれのみの地味な駆け引きになっていく(のかもしれない)。誘い技などをしなくてもちょっと踏み込むタイミングを変えただけで互いにその先を読むという戦いになれば、派手な技はスキ以外の何物でもなく、恐くて出すことはできない。
 ちょっとした動作やリズムの変化で相手の思考を惑わしたり、威圧できる域に早く達したいものだ。


心を食らう
 
 舞台演出による心理的勝利を「(相手の)心を食らう」と言う。同じダメージでもその後も割り切ってマイペースに戦える使い手とある程度迷いを持ってしまう使い手がいて、一般的に思考計算型の大部分は後者である。自分の読みや分析をベースにしている以上それが覆されるとその強さは半減されてしまうからだ。
 それが心理技の恐ろしさで相手が感情のない機械でないかぎりその1回の成功からそれを利用した心理的駆け引きで2回・3回とダメージを与えることができるのである。心理技は対応技と違ってそれからの展開に響く技なので、確実性を時には排してでも狙う価値があると思う(狙いすぎると道化になるが)。
 逆に心を食らわれた時はそれでペースを乱さず、冷静になることが重要である。
 勝ってる時の料理の仕方などは誰でもノリノリで強いものだが、逆境の時の精神力がその使い手の格となって表れる。耐えきれずに本来しないはずの軽率な技を出したりするようでは論外だ。

 

 

 

 

 

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