ゃがみ強キック(その1)

 

 

評)

 
 しゃがみ強キック(以下・大足払い、大足)はリーチも長く、攻撃判定も強く、完成も速く、転ばせることができるので足技戦の切り札的存在だ。その強さの反面、一度空振りすれば確実に反撃を食らうスキがあり、気軽に使うことはできない。強力な一撃とそれに見合ったリスクが真剣の斬り合いのような緊張感を与えてくれていると思う。
 大足払いがその使い手によって凄まじく化けることがあることに気づいた私は、器用な連続技ができないこともあり、唯一大足払いの斬れ味を鋭くすることに専念した。何年も大足払いにこだわってきて、それでも大足払いを極めることはできず、あと一歩踏み込めない心の弱さと今でも戦っている。

 

 

1.殺大足払い(地獄車大足)

地獄車のこと。はっきり言って大足払いの延長。足払いだと思ってくれて結構。
 投げ間合いまで踏み込めた時や防御を察した時、相手がギリギリの間合いで大足払いを空振りしてくれた時にはとっさに大足払いから地獄車に変更する(超反応ならば中足払いの戻りに投げ間合い近くまで入り込める)。ごろごろごろごろ。
 この地獄車大足ができるかできないかによって勝率が2倍くらい違う(経験者談)。何故なら一回成功するだけで一気に相手を壁際に追いつめることができるからだ。
「ダメージが大きいし、受け身を取られないからヒザげりの方が有効」と言っている人はリュウケン戦の虫かごの恐怖を知らないか、よほどの実力者だと思う。
 「リュウケン戦で相手を虫かご状態(詳しくは虫かごを参照)にしたら小指の爪ほどの体力からでも逆転できるのでは?」と本気で考えてしまう。壁際は体力を根こそぎ奪える屠殺場だ!
 キャンセルだ? 連続技だ? どうでもいい。これをマスターしたものが勝つ。1試合に1回成功させれば7〜8割は勝てる。壁際ブラックホールは脱出不可能だ。

 リュウでも相手の防御を読んだら踏み込んで投げに行った方がよい。ここで投げておかないと相手に思考時間を与えて立ち直らせてしまうし、防御しつつミス待ちなどという落ちついた戦法を可能にさせてしまう。
 投げは確実性がないので危険だからしないと思っていた人もその場面で投げが成功した時に得られるもの(ダメージ・主導権・相手の混乱・次への布石)とそのリスクを比較してもう一度判断して欲しい。
 そこで投げたら勝利が決定的になる流れというものがあるし、また投げなかったためにたたみこめず敗北を期することもある(投げがないとわかった時点で相手にスキは生まれないから)。投げを欲張ったために流れを断ち切ってしまうということもあるにはあるが、その失敗も心理的威圧になっている(と思う)ので、その後の駆け引きに利用できるので無駄にはならない。

 あなたが今までのデータの蓄積から相手の思考を分析する心理分析型リュウケンならば相手が防御をしてしまうパターンというものがわかるはずだし、相手の思考を決めつけて行動するイメージ先行型リュウケンならば自分の流れをつかむ呼吸がわかるはず。
 そしてそれまでの組立の中で相手が防御するようにしむける舞台演出型リュウケンであるならば、確信を持って投げに行ける(投げを成功させるための用意は整った!)。足払いが近距離で投げに変化するという通常技の変化くらいに思って狙える時は狙うべきだ。
 しかし、あなたが時間や体力差などを利用した駆け引きが得意な料理人型リュウケン(蟻地獄中足を参照)ならばここで投げに行かないという堅実さによって相手にプレッシャーを与えることができるのでそのかぎりではない。 

イメージ先行型リュウケン

 相手に行動に合わせるのではなく、自分の楽しい展開を思い描いてそのとおりの行動をとる感覚派リュウケンである。「俺はこれをやりたい、やることに決めた。相手がどう動いていてもこれをやる」このようなタイプをイメージ先行型リュウケンという。
 上達してくると相手の行動を読むだけでなく、相手に間違った情報を与えて自分に都合のいい行動まで導くようになるが、このタイプのリュウケンにはまるで効果がない。
 彼らは流れや計算とは縁のない何かから自分の行動を決断する。打算のない純粋な予測(?)とそれを信じられる強い意志で体力や展開を考えたら(とくに理論対応型リュウケンには)絶対できないような行動をいともたやすく実行する。
 ダメージを恐れない。これが恐い。
 バクチなどは都合のいい色気が入るので読めるのだが、これは読めないのだ。
 そして最も恐ろしいのが心は揺れず迷わないところだ。1回失敗すると次は弱気に流れたり違うことを試みたりして読み易くなるものだが彼らにはそれがない。
 そのため展開によってはまずやらない選択肢でも消去法で消してゆくことができないのだ。駆け引きでこちらが有利だったはずが、イメージ先行型リュウケン相手だと常に同キャラだから五分五分なのである。
 イメージ先行型リュウケンの強みは思考計算型リュウケン(後述)と違ってどんな相手にもどんな状況からでも勝てることで、また何をするかわからない気狂いのような恐さで相手によけいなことを考えさせ本来与えられるダメージを食らわないことだ。
 さらにやっかいなことにイメージ先行型リュウケンは正体を隠している。
 いつもは普通の駆け引きをしていながらある局面で突然豹変してくるのである。 最初から最後までイメージ先行でいろよ バカヤロウ! 

 

2.のジュウザ投げ(北斗の拳)

 最も華麗にして大胆な技(リュウケン七奥義のひとつ)。
 読みと決断と集中力の三重奏。リュウはちときついが、素早いケンなら充分狙える。
 相手が踏み込んで足払いをしてきた時に後ろへ下がってスカそうとするのではなく、逆に踏み込んで相手の足払い完成前に投げてしまうという技。
 投げ間合いに入ることさえできれば、たとえ相手の足払いが出ていようともそのグラフィックごと吸い込んで投げられるので、昇龍拳と並び一瞬で足払いを攻撃できる必殺技(コマンドは昇龍拳よりも簡単)だと思うのだが、あまり狙う人はいないようだ。
 踏み込みの鋭い上級者に有効で、1回成功するだけで相手の踏み込みがまず甘くなる。こんなに使えるのに何故使わないのか不思議だ。
 西荻のリュウケン戦では近距離での微妙な攻防が行われることが多く、ストU’の頃にはすでに駆け引きの中に入っていたと思う。

 その前の段階で足払いを空振りをさせるなど、相手が踏み込んできた時に限界まで足払いを我慢させる布石をおいてそういう状況を作る(または相手の踏み込み心理を見抜く)のだが、そんなことをしなくてもどんどん吸い込まれてくれる相性のいい人もいる。
 空振りを狙って後ろに下がっても追いかけてきて足払いを入れてくるような追尾型リュウケンを苦手とする人は、発想を変えてみよう。相手が築き上げてきた戦闘スタイルの根本を撃ち砕き、その踏み込みに疑念を抱かせ、さらに苦手意識を植え付けられればその後かなり有利になるはずだ。

 ちょっと話はそれるが、この苦手意識、対戦において勝負を左右する重要な要素になりえる。相手の実力を認めることは大事だが、評価しすぎると臆病なプレイしかできなくなる。すなわちこれは返される、これは危険すぎると、確実な技、安全な技しか出さなくなるのだ。確実性は誰しもが求めるものだが、多彩な選択肢を
犠牲にしてまで得るものじゃない。足払いを絶対に食らわないで自分から足払いを当てるなどということは同キャラ戦では不可能だし、全く危険のない技があったら駆け引きは成立しないのだから。

 苦手意識を持つと自分の技が全て通じないような気がしてくるが、そんなことは絶対にない。リュウケン戦は読み勝てば必ず相手の行動の裏が取れるようになっている。たまたま自分の得意な戦い方が通用しないタイプ、または流れであっただけで、相手を破る手だては数多くあるし、その後の駆け引きで通用するようにもっていくこともできる。
 その通用しない戦い方しかできないから勝てないのであれば、それは苦手なのではなく、その他の戦い方が未熟なだけだ。対戦ではこの人には勝てないと思った瞬間に本当に勝てなくなる。これは絶対だ。
 対戦台で相手がわかった途端に負けるなんて恥ずかしい状態になってはいけない。

 さて本題。逆に言えば対戦で勝利するには「相手に苦手意識を持たせ、有効な技が通用しないように思わせること」が非常に重要なのだ。
 3本勝負である以上2回勝たなければならないから、1ラウンドの勝利の中に次ラウンドで有利になる要素をできるだけ織り込む。ある連携技やフェイントを印象づけたり、逆に食らってくれそうな技を覚えられないように使わなかったりもする。 そして最もてっとり早い方法が「相手の信頼している技をとりあえず1回破る」ということだ。
 相手の1度やった連携とタイミングを覚えて次の時にはとりあえずその読みと心中してそれの返し技をしてみよう。成功する、しないに関わらず(するにこしたことはないが)、この決断ができると相手に対するプレッシャーの量が違い、失敗しても相手のペースで試合が展開がしてしまうことはない。
 自分が安全な対戦相手にならないことが大切だ。

 最も恐るべき足払いには最も恐るべき投げで報いよう。危険は伴うが得るものはあまりにも大きい。
 自分が食らったら鋭い踏み込みの証明であるので、勲章くらいに思って今後の駆け引きを考えれば良い。「奴がすごいんじゃない、すごいのは俺の踏み込みだ!」 実際それは本当だ。ジュウザ投げを仕掛けられる相手なんてめったに会えないのだから。

(追加)
「相手の力を100%出させてなおかつ勝つ」というのに憧れはするが、理想でしかないと思う。自分のペースに持っていって相手の実力の半分も出させない戦い方(出せない実力などは本当は実力ではないのだが)、今のところ強いと言われている人は全てこのタイプだ。

 

3.リア投げ(逆境の投げ)

 極限の大足払い。
 雲のジュウザ投げの兄妹技(・北斗の拳)で、ジュウザ投げを相手の行動を読んだ攻撃の投げだとすれば、ユリア投げは反応を頼みとした防御の投げだ。
 相手が後ろに下がると読んで踏み込んだ時に読みが外れて相手に踏み込まれた場合、とっさに足払いをしても相手の技の完成の方が速いので間に合わない。そんな時は緊急非難でさらに踏み込んで相手の技ごと投げてしまおう。
 呼吸さえ覚えてしまえば、だんだん一つの返し技として狙えるようになる。
 ユリア投げは相手の踏み込み間合いに依存するので確実とは言えないが、その他の対応もそれぞれ問題があるので私はこれを採用している。とっさに防御だと相手が踏み込んで投げに来ていた時に対応しにくいし、昇龍拳入力は確実にできるのならよいが失敗しやすい。最高は反応でジャンプして連続技だが、実際可能か疑問だ。
 どれも一長一短があるので不安定なものだが、読み間違えても頭を切り換えて修正すれば返せる状況もあるので訓練しておいた方がいいと思う。本来自分に足払いが入る場面で逆にダメージを与えられたら全然違う。相手はやってられないだろう。

影ぬい効果(空ガード)

 ストUには相手が技を出した時に自分がレバーを後ろに入れていると防御したように硬直をしてしまう空ガードという状態があり、これを狙って故意に技を空振りすることを影ぬいと呼んだ。これがストUの駆け引きを面白く、そして奥が深いものにさせている要素である。
 空ガードは相手の技の届かない間合いまで下がるという安全な選択にそれなりのリスクを持たせるという重要な意味があるのだ。足の速いキャラが後ろに下がろうとした時でもこれを利用すれば追いつくことができたし、この硬直時間を利用したいろいろな心理技が存在する。
 リュウケンの足技戦では足払いを空振りさせることが重要であり、その退いてスかすという行為に対する返し技がこの影ぬいである。相手のする行動に対する技が用意されていないと駆け引きは存在しない。

 

4..(背筋に)流大足

 自分が踏み込んで投げを狙ったが、敵がそれを察したという危険信号が走った時、一瞬で足払いに切り換えるという投げ間合い寸前の接近距離での大足払い。「あと一歩踏み込んでいたら俺は殺られていた…」と本当につぶやいてしまうほど殺気を感じられれば本物。
 これは一瞬の電流が背筋に走る時にできる大足なので、説明は難しいが、本当にある(鳥肌ものである)。この技は気配、または超反応の特性上、防御されることはほとんどない。
 同様に「あと一歩踏み込まれていたら投げられていた」バージョンもある。

野生の勘

 対戦中、相手が絶対にこう行動するという確信に至る読みの他に、理屈じゃないビビッとした予感が走ることがある。私の場合主に前述の電流大足と後述の背水の大足「大足を振るな!」という防御面で感じることが多いのだが、西荻のリュウケン使いの一人Wは「ここで跳べ」という攻撃面で感じるそうだ。
 野生の勘を戦略に入れ始めて期待するようになると効かなくなるような気がするが、真剣に戦っていて突然本能が察知した場合その的中率は100%に近いのではないだろうか。多分みんなも対戦中嫌な予感を感じたらまず当たるだろう。
 個人的にはこの野生の勘を経験から来るものと理論づけしたい(証明は不可能)。
 私のような防御面での野生の勘はこう考えられる。今までに経験してきた対戦の中で全く同じシチュエーションが存在し、頭で記憶していなくても体の細胞が当時の状況を振り返り警報を鳴らすのだ。これを「細胞の警告理論」と名付けよう
(かっくいぃぃ)。
 攻撃面での野生の勘は獲物を仕止め損ねた狩猟民族の熱き血潮がその口惜しさから同じシチュエーションに遭遇すると逆流し、攻撃命令を発するのだ。
 これは「血脈の命令理論」と名付けよう。
 こんなことを考えるのもけっこう楽しいね。

 

5.ざ大足

 ひざで蹴っころばせる近距離大足払い(間合い的には電流大足とほぼ同じ)。 だいたいぐーっと近づいて相手が技を出したくなるくらいの限界点(あと1歩で投げ間合い)で大足払いを振ることをいう。
 これは反応対応型リュウケン(後述)相手に使うことが多い。自分が踏み込み投げを1回でも見せて相手が疑心暗鬼(または警戒)状態になっていると思った時にも使用する。
 対応型リュウケンには反応対応型と理論対応型があるが、昇龍拳以外の技では確実に返せない状況では防御というのが染み着いている。そのうち反応対応型リュウケンはふっと踏み込まれると足払いだと思い防御してしまうが、さらに踏み込むとなまじ反応がいいために何か技を出してしまうのでこのひざ大足が効くのだ。ちなみに理論対応型リュウケン(後述)は防御しているので投げてしまえばよい。
 対応型リュウケンでなくても貫通大足払いを防御されるようになったら何度か この間合いの大足を混ぜることにより強引に足払いの駆け引きに持ち込むのは有効だ。危険は伴うが相手に何か技を出さなければならないと思わせ心理的に追いつめることができれば、1回返されたとしても後に生きてくると思う(いや生かさなければならない)。

反応対応型リュウケン

 反応対応型は目の前に出たものをとっさに攻撃できる局地戦の達人で、間合い把握力と反応に自信があるのでふらふらとさりげ待ちをしつつ相手の空振りを確実に攻撃できる。また、攻撃中に全く違うことをしようとしていた時でも相手の行動に合わせて瞬間的に返し技に切り換えることができる。組み立てというよりもその局地戦の積み重ねで勝負するタイプだ。超反応対応型リュウケンに苦戦することがあるが、所詮反応なので防御が甘かったり、誘いにひっかかったり、精神的に弱く迷いをもったりと雑な部分が多いような気がする。防御壁(後述)はやっかいだが、読みと駆け引きで優ればなんとかなるだろう。反応がいいことは有利だが、それだけで勝てるほどリュウケン戦は甘くない。

理論対応型リュウケン

 理論対応型は理があってその後で反応がくるので瞬間的な切り換えはあまりない。この間合いのこの技にはこれ、踏み込んできたらこれ…というように技と間合いの知識を重んじ、経験で身につけた予測力・洞察力で相手の行動を見抜き、その用意をしたうえで確実に対応してダメージを与えることを目指すタイプだ。
 強くなってくるとバクチ的戦いを避け、身につけた実力の総合力勝負に持ち込んで最終的に 勝てるようにするので、常勝を目指す実力者は自然とこのタイプになっていく (極まると緻密封印型リュウケンへ発展する可能性がある)。
 しかしそれが度を過ぎると極端に冒険やミスを嫌うようになり恐くなくなる。
後手後手に回ってくれるし、予想外の行動をせず、自分の設定した駆け引きの中で戦ってくれるので読み易い。それに威圧感がないから心理的に楽だ。

リュウケン戦の魅力

 使い手の中にいろいろなタイプが内胞しているがそれらの最も強い特性を分類すると、それまでの展開や状況などから相手の心理を洞察しそれをベースにして自分の行動を決定する思考計算型リュウケン、自分のやりたいことを貫き通すイメージ先行型リュウケン、反応をベースにした局地戦の積み重ねで勝負する反応対応型リュウケンの3種類だと思う。 
 思考計算型同士の戦いは読み合い計算勝負(舞台演出型との騙し合い)、思考計算型とイメージ先行型の戦いは理論対直感の勝負(イメージ先行型のイメージ構成が相手の思考や器を貫けるか、思考計算型の予測範囲内か)、思考計算型と反応対応型の戦いは長期戦と短期戦のペース争いである。

 

 

 

続き

 

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