確率戦

(未完成理論)

 自分が対戦中に相手の行動の予測する時の瞬間的な思考の流れ(段階的計算)をちょっと文章にしてみました。自分の表現力の限界もあり、「人それぞれなのでは?」という空しさもあり、未完成理論とさせていただきます。
 まあ、参考にして下さい。

 
 関門2択の駆け引きは「理論的確率」と「心理的確率」の2つから絞っていくと思う。
 相手の選択できる全ての行動に対して関門が用意できる状態を目指すのが「間合い戦」であるが、簡単にそんな状態にさせてはもらえないし、その時まで攻撃をしないなどというのは不可能だ(相手の選択肢を簡単に潰せることをキャラ勝ちと言う)。
 それに確実な攻撃しかしないという行為そのものが予測されやすくなり、結果的に自分を窮地に追い込むことになる。壁際に追いつめられたり相手の踏み込みが鋭くなったりして、確実を目指した臨界点を越えた時、全く正反対の不確実の波が襲ってくるのである。だから確実な対応だけできる者が最終的に勝てるわけではない。
 確実を目指すものの、臨界点を越えるわけにはいかない。不確実の波がくる前に、自分の有利さの度合いを計って「この場面ならば仕掛ける価値はある」という状況で勝負するのである。その有利・不利の計算を「確率戦」と呼ぶ。



論的確率の3要素

 まず、「確率戦」の2つの要素のうち前提条件の部分、上記の「理論的確率」を整理する。
 相手の行動を予測するためには、まずその瞬間において相手と自分が決断可能な選択肢の組み合わせの機能的優劣を純粋に計算し、分析することから入ると思う。  
 これを「理論的確率」と呼ぶことして、「勝率」「能率」の2つと「記憶&消去」の合計3つの要素から考えてみる。


門勝率

 相手が自分の選べるある行為に対しての関門を用意するために、それ以外の3つの関門を開かなければならない場合、単純に考えて(何の流れもないという前提で)4回やれば3回は自分が勝てる。このような考え方が「関門勝率」である。

 具体的には、「自分の踏み込み足払いに対して中足払いで止めるという行為は、自分の踏み込みに対する関門であり、自分が早めに足払い・踏み込んで昇龍拳(他にもあるが省略)という鍵で開けられる」のである。
 その勝つことができた関門の鍵を視点を変えて関門として考えてみると、この技を阻むが、それ以外に対しては全く無力な門であったりする。
 昇龍拳という関門は対足払い用の防壁であり、空振りさせるという鍵があればいともた易く開いてしまうのである。
 その空振りさせるという関門は踏み込んで足払いという行動に対しては何の役にも立たないし、その踏み込むという行動に対しては足払いをするという関門の他、下がるという関門が用意できるが、攻撃にはならない。
 下がるという行為には立ち小パンチなどで空ガードさせて足止め(影ぬい)をするという鍵もある。しかし、影ぬいは何の攻撃にもならないので、自分の全ての関門は開け放たれる。
 影ぬいを攻撃するための踏み込みには普通の足払いなどの関門を用意することができる。 
 このように1つ1つの行動にはほとんどの場合、「これとこれには関門になり、あれとあれには意味がない」など「勝率」というものはつきまとうのである。
 経験を積むことで「この1つ鍵で相手の3つの関門が開けられる」などとわかってくるし、互いの関門と鍵の組み合わせのそれぞれの勝率に「相打ちになりやすい」や「タイミングがシビア」などの要素をてきとうに加味して計算し、「この間合い、この状況での技の組み合わせは自分の勝利(有利)、または相手の勝利(有利)」くらいはわかるようになる。

 この勝率計算には「その関門に対する鍵の存在を自分が知っているか」という知識と「用意できるか」という実践も重要になってくるので、経験は必要だ。
 ジャンケンのように「いっせいのせ」で同時に技を出し合うもののではなく、同じ組み合わせでもタイミングの微妙なズレと間合いの変化で勝敗が変わることがあるからである。
 この段階、すなわち関門の数と鍵の数、その組み合わせの計算は知識と経験がものを言う。この根本(土台)が間違っていると、その後の判断も狂うのでおろそかにしてはいけない。
 何故なら知識があってこそ、「この場面で勝率の悪いあの技をするはずはない!」や「この場面で勝率の悪い技ばかりを出す未熟な相手」など分析や読みが可能になるからだ。知識を固める前に読みに入るのは浅はかだと思う。
 
 ストUの場合この関門の知識のほとんどが通常技なので、他人のプレイを見て返し技などを知った瞬間に即実行できることが多いと思う。
 具体的には、「起き上がりに昇龍拳で削られた後に着地した間合いは大足払いが届かない間合いなので、昇龍拳の着地を大足払いで攻撃すると空振りする」ということを知っていれば、ただそれだけでその選択肢を選ぶことはない。
 自分の経験した状況を覚えて失敗や成功を分析でき、また他人のプレイを見てその状況を認識できる人は強くなると思う。









門能率  

 4回に1回の勝率でも、負けて相手から与えられるダメージの3倍くらいダメージを与えられるのならば、どうだろうか。
 単純に五分ではないだろうが、勝率が極端に不利でも充分駆け引きになる。
 自分の行動が成功した時のリターンと失敗した時のリスクのバランスを考える。それが「関門能率」である。

 「勝率」がよくて「能率」がよいものが理想。上級者はそういう状態を連携にしたりして有利な駆け引きをする。しかし、こういうおいしい技がただの必殺技であったりすると、その技を出すか出さないかという駆け引きになり面白みは半減する。
 使い手の力量が反映する対戦とは、「勝率も、能率もいいという状況に持っていくのが難しいこと」だと思う。

 有利・不利が極端でない場合の「勝率」を取るか「能率」を取るかという微妙な判断がその使い手によって異なるので、対戦相手の情報が重要になってくるのである。
 「能率」に片寄ったプレイを私は「バクチ」と呼んでいるが、ところによっては「ロマン」とか「男らしさ」とか呼んでいる。
 「勝率」に片寄ったプレイを私は「堅実」と呼んでいるが、ところによっては「つまらない」とか、「チキン」とか呼んでいる。
 
 「勝率」と「能率」を合わせたキャラ同士の純粋な選択肢のバランスを普通「対戦バランス」と呼んだりして対戦ダイヤグラムなどを作成する時に使用する。
「心理的な部分が五分だとしたら(まずありえないが)このようになりますよ」という目安のようなものだ。
 よく雑誌のダイヤグラムに納得できないのは、対戦相手がある関門を知っているかによって強さが変わったり、心理的にひっくり返されている部分と「勝率・能率」がお互い混ざってしまっているからだと思う。




 以上、「関門勝率」と「関門能率」の2つはもう前もって互いにわかっていて、その優劣の凌ぎ合いが「間合い戦」なのである。
 対戦中は自分が有利な状況にするための組み立てをしているはずなので、ただ単にその局地戦戦術(2択など)で負けたのではなく、その局地戦に入る前の 戦略的段階(不利な間合いまで近づけてしまった、その技が有効に使える間合いに相手を置いてしまったなど)で負けていることが多い。


門記憶と関門消去 
 
 これを確率に入れていいものだろうか。

 たった1回の局地戦は「相手にこの関門を置いたという事実を突きつける」ということである。例えダメージを与えるという結果に結びつかなくても、自分は「私はこの状況ではこの関門という選択肢を持っていて、あなたのこの技を阻もうとしました」と宣言してしまったのである。
 この自分へのメッセージ(動かし難い事実)を覚えておくことを「関門記憶」と呼ぶ。
 この記憶があいまいだと判断材料が少なくて、確信に至る読みになりづらい。 また、撹乱技かメッセージかを判断して取捨選択をしなければならない。 

 この「関門記憶」を使って相手の選択肢を限定し、その状況で相手が決断しない選択肢を消去していくことを「絞る」と言う。
 もし、次に同じ状況になった時(自分が仕掛けた時)相手が同じことをする確率は今まで自分に見せたことがない技よりも高いはずだ。例え2択という裏表といえども片方にさっき選んだという事実があれば、ちょっとは傾く(投げか、投げじゃないかという「純粋2択」は誰でも知っている前提なので例外とする)。

自分はこの状況で相手の対応を4つ知っているが、相手は3つしか知らない時、2度、3度という重ね合いの中でそれに気づいて「相手はこの場面であの行動をすることは(まず)ない」というところまで絞り込むのである。
 また知識があっても実践できない人もいるので、1回失敗した時など心理的にその選択をする確率は極端に低くなり「関門勝率」の値が変わるのである。

 もちろん考えなくていいとまでは言わない。しかし、最終的に何かの行動を 決断しなければならない場合や勝負強さという点を考えると、何かしらの根拠をもってバッサリと相手の選択肢を切り捨てなければならない場面が出てくると思う。
 また、切り捨てたはずの選択肢を最後の最後で切り札として有効に使われてしまうのは、その選択肢を使わせるほど追いつめられなかったことが原因であり、その時点で負けているのである。

 経験上のことだが、上級者になるほど戦闘スタイル(その状況における対処と決断)というものが完成されていき、故にこの「関門消去」が可能になる。
 対戦の戦法は地方性があり、「その使い手の回りの対戦友達の戦法に対して有効な行動をつい他の対戦相手(自分)にもしてしまう」という固定化が進み、上級者相手と言えどもその環境・経験によって穴を見つけられる(そのかわり1度そこを突いても2度目は学習機能で修正してくる)。
 完成されていないレベルならば「関門消去」は有効ではないが、雑なだけなのでその他の部分(勝率・能率計算の段階)でひねり潰すことができる。

 

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